20170702_32°C
このまま世界を飲み込んでしまうんじゃないか、と思う夕闇がある。
雲が照らす夕焼け色に被さって濁したような、オレンジと夜とグレーが混ざった色。
前に選挙へ投票しに行った帰りもこんな感じだったっけ。
梅雨と夏がサンドイッチされたような湿り気に、立ちこめる緑の匂い。
誰かのつくった肉じゃがの湯気、ぬいぐるみのような飼い犬の横で新聞を読むおじいさん、ピンク色のアイスクリームを頬張る女の子、「明日月曜日だ〜」と嘆きながら子どもたちと自転車を漕ぐお父さんの後ろ姿。
誰かの「生活」が、ぐんと身近に感じられて、普段気づかないことに意識がひっぱられる。
と同時に、ふと一年前の選挙の日の自分と今とを重ねた。
去年のわたしは、一昨年のわたしが思い描いたとおりの道を進んでいた。
今年のわたしは、もしかしたらどこかで何となく「あるかもな」と思っていた道のひとつを選んでいるところなのかもしれないけれど、たぶん想像とは違っていた。
就活をしないと2年前に言ったのは、周りのひとの裏切りになってしまうかもしれない、という不安だけじゃなかった。
ああ、君も収まるべきところに収まったんだね、安定を選んだんだねと、言われたときに返す言葉が見つからなかったからだろう。
色んなことを置き去りにしたまま就職してしまったら、今とは全く違う方向に進んでただ苦しいだけだったに違いない。
へたくそだけど、ちゃんと自分の頭で考えぬいて、今の自分ができることをすべてやってから挫折したかった。
今回も、わたしにとっては挫折そのもので、実際終わってからの1ヶ月間は生きることが何でこんなにもしんどいのだろうって、とにかくその気持ちを外に出すことで必死になっていた。
友だちに、毎日ラインで生きるのがつらすぎる、と嘆いては困らせた。
ちがう、本当は、やりたいことを押し殺して数年全く違うことをするなんて、できないと気づいたからだった。
わたしは、どんな立場になっても、コンゴのことを何とかしたい「もやもや」からずっと手を離さずにいたい。
いつかやろうのいつかは一生やってこないということも、胸に留めて。
「もう社会人だから」と諦めなくてもいいことが、虚勢を張らなくていいことが、目の前で握りつぶされるのを見るのは、もう嫌だな。
20170321_9°C
毎日乗ってるのに、気づかなかった。
線路沿いの菜の花、窓から見える隣の家の梅の花。
「人は見たいものしか見ない」という言葉が最近妙に引っかかって、じゃあ身近な春の訪れにも気づかない自分は何を見てたんだろう、とふと我に返った。
毎日走ることができても、一生懸命生きるなんて馬鹿みたい、と裏の自分が囁く。
来る日も来る日も、馬鹿みたい、何やってんだろう、とこぼれそうな涙をごまかすように上を向いて帰る。
栄養ドリンクの瓶が溢れかえるキッチンのポリ袋。空も人も目覚め切っていない暗い早朝。
毎回駅員さんに起こされる終点、ハッピーエンドの映画。内臓が潰れそうな通勤ラッシュ、だめな自分を慰めてくれる親しい人の励まし。
全部が今の自分には受け止められなくなっている。
病院の先生はミュージカルに出てきそうな威勢のいい声で、待合室の目の前の扉はバタンバタンと開いたり閉じたりした。
看護師さんも診察時間終了間際とも思えない朗らかさで、「ストレスを抱えてない現代人なんていないって言うもんねえ」と世間話をしながら注射を次々テキパキと刺す。
会計で治療費を告げられる。アルバイトで働く給与の約一日分が、一時間の診察で消えた。
お金を貯めるために無理をして、無理が続かず体調を崩して病院へ行って。そのために会社も早退して。
本当に、一生懸命生きるって馬鹿みたい。
心から思った。
救われたくてやってるわけじゃない。見返りがほしいわけじゃない。
でも、自分が粉々になって残るものって何なんだろう。
何も残らなかったら、何でこんなことしてるんだろう。
20170307_11°C
もう、頑張り方がわからないな。
20170210_9°C
検察官の夢を持つ前、わたしは丸の内を颯爽と歩くOLになりたかった。
10年後のわたしはバリバリのキャリアウーマンではなく、アパレル企業でアルバイトをする身で、海外ビジネス相談をしに丸の内の高層ビルに囲まれていた。
陽射しをめいっぱい反射する皮膚で覆われた巨大なガラス張りのビルに、隙のないぱりっとしたスーツを纏うサラリーマンたち。
ガラス越しに映る普段着にリュックの自分は所在なさそうだったけれど、背すじはちゃんと伸ばしていた。
もう、選びとった道を、自分の人生を、恥じないって決めたんだ。
今の活動を生活からとったら、どう生きていいか分からない。
それくらい、気づかないうちに人生の一部になっている。
改めてちゃんと胸に留めておこう。
生涯を通して叶えたい夢があるわたしは、しあわせだ。
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