ノートの隅っこにいた、初恋の君と。

 

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いつもいつも、繰り返し聞いては言い聞かせる歌詞のことば。

「やりたいことだってあるけど 時間がないって言い訳してた

時はいつだって待ってくれない だから素直に行こう」

止まったら終わりだと呪いのように心の中で何度も唱えて、一年。

 

順調に進むことに、疑問を持たずにいたわけじゃなくて。

止まってしまえば戻れなくなるって、全部を考え直すにはもう遅すぎるかもしれないって怯えてたんです。

 

「きっとそれでいい」、ほんとに?それでいい―――?

 

歌声を遮る一直線の音。

この時期に聞こえてくる虫の鳴き声でした。

 

 

わたしの実家の周りは雑木林で、春に近づくと木や花が息を一斉に吐き出しているように薫りが立ち込めます。

そして、鶯がちょっと下手な鳴き声で頑張って喋ってるのです。

最初はケキョケキョッってうまく鳴けないのが、段々上手にホーホケキョッって。

 

山鳩のホーホーって音色も、緑に溶け込む優しい響きでとっても好きでした。

 

葉っぱでコップを作って湧き水が流れる小さな川から水を汲んだりしておままごとなんかもしてたな。

 

そんな小さいころの出来事をふと思い出してるうちに、心に小さなスペースが生まれてキリキリしていた気持ちが小さくなっていきました。

 

そして自然と遊んで育ったことと同時に、雷が落ちた瞬間を思い出します。

 

メロンパンを初めて食べたとき。

コンゴの現状を知ったとき。

メロンパンでならコンゴを何とかできるかもと思ったとき。

 

もうひとつの出来事。

 

それは、一冊のノートとの出会いでした。

 

*

 

とにかく大人に好かれることに躍起になっていた小学生のわたし。

色んな事に積極的で勉強ができれば、先生たちはいつも「しっかりしている、頼れるわ」と言ってくれる。

実際に大人の心を掴むのが上手だったし、いつもクラスのリーダー的な立ち位置にいて先生から個人的に頼まれることもよくありました。

 

だけど、早く大人になりたい。

こんな漢字や計算ばっかしないで、もっとすごいことがしたい。

大学を出たら会社でばりばり働いて、成績も出してお金も稼いで、すごく社会に貢献してるぜっ!って感じながら生きるんだ。

 

社会に何もできてない、お金も稼げないし一人じゃ生きられない。

そんな子どもな自分がとても嫌でした。

(今思えば驚くほど生意気です。笑)

 

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ある日の休み時間。

前の授業が終わったら、次の授業の教科書とノートを出すのが決まり事。

優等生を演じるわたしはそのルールを疑問も持たずこなし、手持ち無沙汰に出したノートを眺めていました。

 

 

バーコードの下の数字の羅列を眺めてみたり、扉のコラムを読んでみたり。

ふと裏表紙に目をこらすと、何だか変なマークが。

 

そのマークの下には、小さな声で囁くような控えめさで一言。

 

 

“このノートは再生紙を使用しています。”

 

 

これが、初恋の君との出会い。

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正確に言うと、ちゃんと人間の男の子も好きでした。笑

 

ただ、あんな衝撃的な出会いってなかなかありません。

だって好きな男の子よりも、グリーンマークはしっかりすっかりわたしの心をさらっていったのです。

 

社会のために何もできていないと思っていた所詮子どもなわたしでも、リサイクルされたノートを使ってたんだ。

 

たとえ親から与えられたものを使っているとしても、「わたしが社会の役に立っている!」と感じた初めての出来事でした。

 

 

「“買ったら良いものだった”ではなく、“良いものだから買った”で回る社会にしたい。」

 

 

こう、思わせてくれたのは初恋の君のおかげ。

 

 

 

 止まるのは怖いけれど、もう一度未来を描き直してみよう、かな。