ことの葉

 

 

http://www.flickr.com/photos/65265630@N03/10576017753

photo by Janitors

 

“Hi”の表示とともにスマホの画面が灯る。

 

彼に、豊かな自然に恵まれるコンゴでどうして農業をしていないかを聞いた。

 

「Yes,we have so many lands but people fear for their safety.They are so many armed groups who kidnape people,who loot and inflict several taxes.They also rape women,burn up houses,and massacre men. 」

 

画面から国境を越えて届くメッセージは、逸話じゃない。

本当に世界で起きていることだと、それを知る手段が元凶であるスマートフォンだとは、何て皮肉なんだろう。

 

*

 

 

死にものぐるいでバイトをし、渡航が決定すると30時間をかけてルワンダへ入り、そこからまた国境を越えて辿り着くも数時間で去った国。コンゴ民主共和国

 

なんて遠いんだろうと思ったのは行く前だけで、行ってみればなんてことない距離だった。

そう、言えるんだろうと思っていた。

 

 

それでも、

 

 

帰ってきてからも目の前には消えない靄がずっとかかっていた。

当たり前だ、ほんの数時間の滞在で一国の何が分かったんだろう。

 

街中の写真撮影は禁止、おんぼろのバンに揺られながら流れるコンゴミュージックと通り過ぎる人々の目に宿る光の強さを思い出すことだけがコンゴへ降り立った証として残る。

 

 

ルワンダの元コンゴ兵の社会復帰を支援する施設に行って感じた、市民の人びとへの支援と同じくらい武装解除を推し進めることの必要性。

 

 

闇雲に『武装解除 DDR』で検索をしていると、日本紛争予防センターの理事長である瀬谷さんの本に出会った。

 

 

 

 

職業は武装解除 (朝日文庫)

職業は武装解除 (朝日文庫)

 

 

 

瀬谷さんの物怖じせずチャンスだと思ったときには即行動する気持ちの良さと、過去の危険な出来事もユーモラスに表現する軽やかな語り口にすっかり惚れ込んでしまった。

 

 

と同時に武装解除にあたり支援が集まることで、かえって元兵士であることに価値があるとはき違えてしまえて自ら元兵士であることをアピールして支援を求める現象も生まれるということも初めて知る。

 

例えばコンゴでは、市民女性にレイプをした加害者側の兵士が罰せられることはない。

元兵士が社会復帰のために職業訓練が受けられて、被害者たちが何の保証もされず損だけをすることになる。

 

 

何をしたらいいんだろう。

 

*

 

「農業ができない代わりに、女性はスモールビジネスをする。

男性は家族を残して約4年間、鉱山へ資源採掘しに行く。」

 

4年間。

そう、彼は4年間と言ったのだ。

 

「幼い子どもを抱える母親は、その間ひとりで子育てをしなければならない」とも。

 

 

コンゴ東部、ブカブの大学に通う彼とは落ち葉を拾い集めるように言葉を交わす。

そこに希望があると信じたいけれど、いつもわたしが拾っているのは犠牲になった後の今の姿でしかない。

何がないか、どれだけ苦難にいるかを思い知るばかりだった。

 

 

だけど、彼は最後にこう言った。

 

「だから、僕は女性のことをヒロインと呼んでいるんだ」

 

 

http://www.flickr.com/photos/8470194@N02/8209133582

photo by Oxfam International

 

 

彼のブログではいつも、女性がどれだけ困難な状況で生活をしているかについて書かれている。

 

コンゴの病院でも感じたのは、女性の持つパワーと凛とした美しさだ。

 

 

武装解除についてわたしがすぐにでもできることはないし、コンゴの問題は当事者に聞いてみてもバリエーションが豊富すぎる。

「平和以外なんでもある」というのは揶揄的な表現でもなんでもなく、現実として世界中の問題という問題が揃っている。

 

 

だけど、何かはできるんだと信じている。だから、ずっと忘れずにいたんだ。

 

 

http://www.flickr.com/photos/35483578@N03/14570798503

photo by United Nations Photo

 

 

 

 卒業はタイムリミットじゃない。

フリーターだってアルバイト続きの生活だって怖くない。

かっこ悪いのは、自分の選んだ道に後悔することだから。

 

 

 

来年のメロンパンフェスティバルがいよいよ動き出す。