20170716_35°C
「いろいろ、苦労があるのね。」
感動して私が言うと、
「まあね、でも人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことがなにかわかんないうちに大っきくなっちゃうと思うの。あたしは、よかったわ。」
と彼女は言った。
-『キッチン』吉本ばなな著
色褪せた紫陽花、雨の代わりに降り注ぐ夏の粒々、ビーチサンダルの地面を跳ね返す足音。
夏だ。あつい。どこまで進んでも夏だ。おかしい。スーパー猛暑、なんてネーミングセンスだ。でもここまで暑いと、まぬけな響きも受け入れてしまうほど頭がくらくらする。
高校の同級生が亡くなって6年が経つ。
不思議なくらい涼やかで気持ちのいい風がまつげに触れたのを、昨日のことのように思い出した。
6年前はこんなに暑い日があったかな。
感じている以上に、19歳のあの子と今の自分には長い時間の隔たりがあることに気づく。
同じいのちはひとつたりとも存在しない。
だから、これからも経験したことのない別れを何度も経験するんだろう。
だけど、悲しいことばかりじゃないんだと思う。
胸が引き裂かれる思いを何度しても、どこまで歩いても世界の淵まで悲しみに浸されていても、長い夜につまずいて苦しみから逃れることができなくても。
それはすべて愛なんだと気づくことができれば、何度だって前を向ける。
何度だって、転ぶことを恐れずに進める。