チュリーップと食器、マスカラのこと。
チューリップのこと。
いつか、開くのかなって見てた。
いつ、開くのかなって待ち遠しく眺めてた。
これが、チューリップの咲き方だと知ったときはいつだったっけ。
あんまり可愛くないなって思ってた。
他の花は、めいっぱい花びらを大きく広げてみせるのに。
でも、もしかしたら。
ほんとうはこっそり、大切な相手にだけ開いて見せるのかもしれない。
その姿が見られないのはちょっと悔しいけれど
そう考えたら、幼いころよりずっとずっと愛おしくなった。
*
食器のこと。
「お母さん、それなに?」
「ヒョウハクザイにつけてるの」
何だそれ。とっても怖そうだ。
ヒョウハク、はおそらく“キョウハク”の仲間なんだろう。
ヒョウハクザイにあたるかどうか問われるマグカップ。
さっきまで茶渋でくたびれていたはずなのに、全てを告白した後は潔白の身に変貌していた。
すごい。マグカップも喋るのか。
今でも漂白剤につけられた食器を眺めると、幼いころ裁判にかけられたマグカップをふと思い出す。
そして、何事もなかったかのように白さを取り戻せる素直さが羨ましくなる。
嫉妬心が湧くようになったのは、純粋さを失った証拠なのか、少し悲しい。
*
マスカラのこと。
マスカラって面白いと密かに思うのだけど、うまく表現できない。
チークとか、アイシャドウみたいに分かりやすく色で差異があるわけでないのに、メーカーによっても種類によっても違う。
ロングタイプとかボリュームタイプとか、コームの形とか。
化粧に詳しくないわたしは未だにどれがいちばん合うかとか分からないんだけど(小心者なので店員さんとかには怖くて聞けない)、何か楽しい。
あ、そうか。
マスカラって、墨絵と似てるんだ。
黒一色なのに、そこから違いが生まれるって、不思議でどきどきする。
新調したマスカラに期待。